小規模事業者持続化補助金の審査のポイントは?公募要領に沿って解説

小規模事業者持続化補助金(以下、持続化補助金)の採択率を高めるには、「提出資料がどう審査されるのか?」を理解することが必要不可欠です。持続化補助金の審査のポイントを公募要領の「審査の観点」に沿って項目ごとに解説します。コロナ特別型と一般型のどちらも対応。

審査の全体像

持続化補助金の審査は、基礎審査と加点審査に分かれています。

基礎審査は、最低限満たしていないといけない要件の審査です。基準をクリアしていないと必ず不採択になります。コロナ特別対応型と一般型で共通です。

加点審査は、経営計画書などによる審査です。一般的に審査はこちらのイメージが強いでしょう。コロナ特別対応型と一般型で異なります。

基礎審査(コロナ特別対応型・一般型共通)

基礎審査は、持続化補助金の一般型とコロナ特別対応型で共通です。基礎審査の①~④は、1つでも満たしていないとその時点で不採択になります。

①必要な提出資料がすべて提出されていること

そのままです。提出忘れがないように、公募要領にある「応募時提出資料」を活用してください。

※第3回のコロナ特別対応型から商工会議所・商工会の発行書類(様式3)がなくても応募できるようになりました。しかし、提出資料の不備をなくす観点から、商工会議所・商工会の確認を受けた方が安心できると思います。一般型は、従来通り商工会議所・商工会の発行書類が必要です。

②「2.補助対象者」「3.補助対象事業」の要件に合致すること

公募要領の「2.補助対象者」「3.補助対象事業」の要件を満たしていることです。特に、小規模事業者の基準となる従業員数や、コロナ特別対応型の補助対象経費の制約に注意が必要です。

③補助事業を遂行するために必要な能力を有すること

持続化補助金は書類審査です。審査員は「必要な能力」は書類から判断するしかありません。

この項目は、国の想定する小規模事業者の実情を踏まえたときに、荒唐無稽な計画になっていないか?の判定だと思われます。例えば、販売促進の方法として数億円をかけてキー局にテレビCMを行うといった計画は、補助事業を遂行できる能力がないと判定される恐れがあります。

※小規模事業者だからテレビCMが荒唐無稽という意味ではなく、持続化補助金の制度として支援したい小規模事業者とは対象が異なるというイメージです。

④小規模事業者が主体的に活動し、その技術やノウハウ等を基にした取組であること

小規模事業者の「強み」を活かせる取組みのことを指しています。強みを活かすことで、一定の実現可能性があると考えられる計画になっているか?がポイントになります。

加点審査(コロナ特別対応型)

① 新型コロナウイルス感染症が事業環境に与える影響を乗り越えるための取組として適切な取組であるか。

経営計画書の計画の内容の「3.新型コロナウイルス感染症による影響」「5.今回の申請計画で取り組む内容」「6.新型コロナウイルス感染症を乗り越えるための取組の中で、本補助金が経営上にもたらす効果」が一貫性が重要です。

なお、ここでの「乗り越える」は売上が増えると同義です。公募要領の補助対象事業にも「本事業の完了後、概ね1年以内に売上げにつながることが見込まれる事業活動(=早期に市場取引の達成が見込まれる事業活動)」という記述があります。

審査員に、

  • 新型コロナウイルス感染症によりどんな影響を受けているのか?
  • それに対して、持続化補助金を活用して何をするのか?
  • それに取り組むことで、どんな効果(=売上)があるのか?

が伝わるように書きましょう。

②『サプライチェーンの毀損への対応』、『非対面型ビジネスモデルへの転換』、『テレワー ク環境の整備』のいずれか一つ以上に関する取組を行い、補助対象経費の1/6以上 の投資を行う事業計画になっているか。

支出経費の明細等の「新型コロナウイルス関連投資の割合(%)」が、6分の1(16.7%)以上になることを必ず確認してください。実質的に、加点審査というより基礎審査に近いと思います。要件を満たしていないと不採択になる恐れがあります。

③ 自社の経営状況分析の妥当性、経営方針・目標と今後のプランの適切性、補助事業計画の有効性、積算の透明・適切性を有する事業計画になっているか。

「自社の経営状況分析の妥当性」と「経営方針・目標」は経営計画書の計画の内容の「2.事業概要」で評価される思われます。

「妥当性」は客観性と同義です。例えば、強みと弱みは併記するなどバランスの良い記述が必要です。「経営方針・目標」は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた目標も書きましょう。

「積算の透明・適切性」は、経営計画書の「支出経費の明細等」で評価されると思われます。特に内容・必要理由と経費内訳(単価×回数)は具体的・正確に記入してください。なぜ必要なのかわかりにくい場合や、現実的ではない単価設定などの場合はマイナス評価になる恐れがあります。

加点審査(一般型)

①自社の経営状況分析の妥当性

自社の製品・サービスや自社の強みを適切に把握しているか。

強みの適切な把握であり、弱みについてではないことがポイントです。持続化補助金では、弱みを補うことよりも強みを活かす工夫が求められています。

②経営方針・目標と今後のプランの適切性

経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。

経営計画書の「自社や自社の提供する商品・サービスの強み」と「経営方針・目標と今後のプラン」に整合性があることが重要です。特に、今後のプランた商品が異なりますよ。が強みを活かしたものになっているか?を気をつけてください。

経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。

例えば、飲食店がデリバリーの新商品を開発する場合、高齢化が進んでいる地域と大学周辺で若年層が多い地域では適した商品が異なります。「対象とする市場(商圏)の特性を踏まえる」とはそのようなイメージです。「当社がある○○地域には□□という特性があるので、で、新たにこのような取組みをする」と明確に説明できることがポイントです。

※市場(商圏)の特性は、絶対的な規模だけで捉える必要はありません。上の例なら、「地域全体が高齢化しているため、若年層向けの飲食店が少ない。そこで当店では○○を行う」という考え方もできます。

③補助事業計画の有効性

補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。

「具体的」とは、「誰に・何を・どのように・いつまでに」売るのか?が明確という意味です。顧客層・商品やサービスの内容・販売手法・実行スケジュールなどをわかりやすく記入してください。

「当該小規模事業者にとって実現可能性が高い」とは、あなたの会社やお店の事業規模から見て無理がない計画か?ということです。例えば、新しく通販を始める計画で、大手サイトに数百万円の広告を出稿するといったものは実現可能性が低いと判断される恐れがあります。

地道な販路開拓を目指すものとして、補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。

補助事業計画と、経営計画で書いた「経営方針・目標と今後のプラン」が矛盾がないかをみられます。

補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。

「小規模事業者ならではの創意工夫」とは、「自社にとっての創意工夫」です。創意工夫といっても、他社とすごく差別化できることは求められていないと思います。重要なのは「自社にとっての創意工夫」が伝わることです。

補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。

国では小規模事業者のITツール・サービスの利活用の推進を重要な課題として捉えています。大まかにいえば、ITツール・サービスを利活用している小規模事業者の方が、生産性が高い(=売上が多い)ことがわかっているからです。そのため、加点審査の項目になっていると考えられます。

なお、ここでの「ITを有効に活用する取り組み」は、高度なものは想定されていないと思います。例えば、ホームページの作成や、顧客管理ソフトの活用といった内容でも、審査基準を満たすでしょう。

④積算の透明・適切性

事業費の計上・積算が正確・明確で、事業実施に必要なものとなっているか。

補助事業計画書②【経費明細表・資金調達方法】で評価されると思われます。特に内容・必要理由と経費内訳(単価×回数)は具体的・正確に記入してください。なぜ必要なのかわからない場合や、現実的ではない単価設定などの場合はマイナス評価になる恐れがあります。