
静岡県の「中小企業等危機克服チャレンジ支援事業費補助金(業態転換・新サービス展開事業)」について解説。新型コロナウイルス感染症を受けている事業者が行う「非接触」「遠隔」を実現する新たなビジネスモデルへの挑戦やデジタル化推進の事業に最大200万円補助されます。
※このページの一部の内容は、静岡県経済産業部商工業局商工振興課に問合せた内容に基づいています。
概要
「中小企業等危機克服チャレンジ支援事業費補助金(業態転換・新サービス展開事業)」は、新型コロナウイルス感染症で売上が減少しながらも、「非接触」「遠隔」をキーワードとした新たな事業展開に挑戦する事業者を支援するための補助金です。概要は次の表の通りです。5月29日が締切です。
対象 |
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補助額 | 上限:200万円、下限:50万円 |
補助率 | 3分の2 |
補助対象事業 |
「非接触」「遠隔」を実現する新たなビジネスモデルへの挑戦やデジタル化の推進による生産性向上に資する事業 【事業例】
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応募期限 | 5月29日(必着・静岡県庁への持参も可) |
採択発表 | 6月中旬予定(※詳細未定) |
公式情報 |
ポイント
新しさや大きな変化が重視される
補助金の名前に業態転換・新サービス展開事業とあるように、この補助金は「新しさ」や「大きな変化」がとても重視されます。この点について、公募要領の事業例にある「飲食業における店舗経営からオンラインデリバリーサービス専門への転換」を例に解説します。
新しさについて
オンラインデリバリーサービスの始め方を大きく分けると、
- 自社で新しくシステムを導入する
- 他社のデリバリーシステムを利用する
の2通りが考えられます。
今回の補助金では「自社で新しくシステムを導入する」方が採択には有利になりやすいです。
極端にいえば次のようなイメージです。静岡市や浜松市では6月中旬よりUber Eatsというデリバリーサービスが開始予定です。消費者にとっては、Uber Eatsの方が利便性が高いとしても、今回の補助金的には自社が新たにシステムを導入する事業の方が採択されやすい、ということになります。
他社のプラットフォームを使うのはどんなお店でも(コスト負担さえすれば)できるので、補助対象事業としては評価が下がります。
本当に自社の独自システムが必要かは落ち着いて考えるべき
飲食店のオンラインデリバリーサービスに限らず、「非接触」「遠隔」を実現するために独自に開発しなくても活用できるサービスはたくさんあります。
既にある他社のプラットフォームなどを活用した方が、売上を確保できる見込みがあり顧客の利便性も高いなら、本当に自社独自のシステムが必要なのか?は落ち着いて考えた方がいいでしょう。
補助金といっても事業総額の3分の1は自己負担です。また、補助金の趣旨に合わせて、今後の事業展開を決めるのが適当とも思えません。この制度に限らず、補助金がある「から」何かをやろうとするのは失敗しやすいので止めておきましょう。
大きな変化について
類似したオンラインデリバリーサービスの事業なら
- 既存の店舗を止めてオンラインデリバリー事業の専門店になる
- 飲食店が今までの店舗営業を続けながらオンラインデリバリー事業をはじめる
という2つの事業者があった場合は、「既存の店舗を止めてオンラインデリバリー事業の専門店になる」方が採択されやすくなります。この補助金の考え方としては、類似した事業なら大きな変化を伴う事業者を重点的に支援するという意味です。
※もちろん他社のプラットフォームを利用した事業や、既存事業と並行して行う事業が採択されないというわけではありません。そうではない類似した申請があったときに相対的に不利になるということです。
概算払の割合が70%と大きめ
いろいろな事業者向けの補助金は原則後払いです。申請→採択→事業実行→事業報告を経て補助金が支給されます。つまり、立て替え払いをする必要があります。
しかし、「中小企業等危機克服チャレンジ支援事業費補助金(業態転換・新サービス展開事業)」には概算払いという制度があり、採択決定後すぐに交付申請予定額の70%が入金されます。
例えば、交付申請予定額が200万円なら140万円はすぐに入金されるということです。そのため、一般的な補助金に比べて資金計画が立てやすくなります。手元資金に不安がある事業者もチャレンジしやすいでしょう。
採択率を高めるためにおさえておきたいこと
公募要領の審査基準の「事業有効性審査」について次の記載があります。
- 工夫・改善の内容(これまでとの違い)が明確になっているか。
- 新たな需要の開拓や生産性の向上の効果が見込まれるか。
- 目的達成のための手段・手法が必要かつ十分であるか。
- 計画は、自社の人的体制を踏まえて十分に検討され、スケジュールの面で無理なく実行できるものとなっているか。
- 収支予算書の内容が妥当なものであるか。
これらは、提出する書類のうち「2.事業内容」「3.事業スケジュール」「収支予算書」に記載する項目が該当します。
また、公募要領の「採択基準」について次の記載があります。
審査基準の事業有効性審査については、4人の委員による審査委員会において、5つの項目ごとに 10 点満点の評価による採点を行い、各委員の採点の平均値が合計 50 点満点中 25 点以上の申請者を採択します。ただし、25 点以上のものの補助額の合計が予算の範囲を越える場合は、点数の高いものから順に採択します。
以上を踏まえて採択率を高めるために最低限おさえておきたいポイントは2つです。
1.Word以外の資料も用意する
採点で差がつきやすいのは「事業有効性審査」の1~3の項目と思われます。この部分は、用意されている書類の枠内だけではなくグラフ・図・写真なども使って丁寧に説明することが必要不可欠です(※)。申請の手引きにある記入例のレベルだと他社の申請書類に見劣りする可能性が高いでしょう。
※事業計画書の注釈に「各記載事項について、枠内のみで説明することが困難な場合は、適宜、図表等で整理した資料等を別に作成、添付していただいて構いません。」とあります。こちらの「資料等」は採択率を高めるためには必要なものと考えてください。
2.誰がみてもわかりやすくする
審査をする「4人の委員」がどんな人かは非公表です。いずれにしても、あなたの会社が属する業界に全く詳しくないという前提で申請書類を作成する必要があります。書類のみで採点する加点方式の審査なので、書かれていないことに対して、審査員の知識や想像で加点されることはありません。補足情報
タブレットなども補助対象経費になる
公募要領の補助対象経費の機械装置等費に「タブレット購入」という記載があります。一方で、留意事項には「当該事業の実施のためだけに使用するものを補助対象とすること」という記載もあります。
タブレットのような汎用的に使えるものでも、主目的な今回の補助事業で必要不可欠なら補助対象経費になるという意味です。
どのくらい採択されるかは未定
中小企業等危機克服チャレンジ支援事業費補助金には、このページで解説した「業態転換・新サービス展開事業」の他に「マスク等生産設備導入事業」があります。
危機克服チャレンジ支援事業費補助金全体で予算が決まっているので、業態転換・新サービス展開事業が何件くらい採択されるかはわかりません。
売上減少は月途中からの計算でもOK
中小企業等危機克服チャレンジ支援事業費補助金(業態転換・新サービス展開事業)に申請するには、令和2年2月以降の売上が前年同月比で10%以上減少している必要があります。
前年同月比の期間については、3月15日~4月15日といった月途中の計算でもOKです。例えば、製造業などで4月途中から売上減少が顕著になっているような業種でも要件を満たせる可能性があります。
小規模事業者は他の補助金を検討した方がよい場合も
新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少している事業者が行う新しい取組みを支援する補助金は中小企業等危機克服チャレンジ支援事業費補助金以外にもいくつかあります。
特に、小規模事業者(※製造業などは従業員20名以下、商業・サービス業は従業員5名以下)は、他の補助金を検討した方が採択に有利になる可能性があります。
理由は、
- 中小企業等危機克服チャレンジ支援事業費補助金は規模の大きな企業とも競争になる
- 補助上限額や概算払の割合が大きいので競争率自体が高い可能性がある
からです。
いくつかの補助金を比較したものが次の表です。
中小企業等危機克服チャレンジ支援事業費補助金 | 小規模企業経営力向上事業費補助金 | 小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型) | |
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どこが主体の制度か? | 静岡県 | 静岡県 | 国 |
補助額 | 上限200万円、下限50万円 | 上限50万円(※下限なし) | 上限100万円(※下限なし) |
補助率 | 3分の2 | ||
概算払い | あり(70%) | あり(目安は50%、個別事情で変動可能性あり) | あり(50%) |
締切 | 5月29日 | 5月29日(次回以降も受付あり) | 6月5日(次回以降も受付あり) |
詳細 | こちら | こちら | こちら |
「小規模企業経営力向上事業費補助金」と「小規模事業者持続化補助金」は小規模事業者しか申請できません。結果的に、中小企業等危機克服チャレンジ支援事業費補助金よりも採択されやすくなる可能性が高いです。中小企業等危機克服チャレンジ支援事業費補助金で対象になる事業は、どちらの補助金でもできると考えてよいです。